アインジーデルンにおけるツウィングリの活動は、もっと広い範囲の働きの準備であって、彼はまもなく GCJap 203.5
その働きに入った。すなわちここに三年いた後、彼はチューリヒ大聖堂の説教者として召された。チューリヒは、当時スイス連邦の重要な都市で、ここでの活動は、遠くまで影響を及ぼすのであった。しかし、彼をチューリヒに招いた聖職者たちは、革新的な者の侵入を防止しようとして、彼の務めについて次のように訓示を与えた。 GCJap 204.1
「あなたは、小額の献金でも見過ごすことなく、教会の収入を集めるように努力せよ。説教壇と告解聴聞席の両方において、忠実な信徒たちに、すべての十分の一税や教会税を納め、献金によって彼らの教会に対する愛を示すように勧めよ。病める者から、ミサから、そしてその他一般の教会儀式から生ずる収入を増加するよう熱心に努めよ」「秘蹟の授与、説教、群れの世話などもまた、司祭の務めである。しかしこれらに関しては、特に説教については、代理人を用いるがよい。あなたは著名人にだけ秘蹟を施し、しかも、依頼された時だけ行うべきである。だれかれの区別なく施してはならない」 GCJap 204.2
ツウィングリは、黙ってこの任命の言葉を聞いた。そして、この重要な地位に召された栄誉を感謝した後で、彼は、自分が採用しようとしている方針について説明した。「キリストの生涯は、長い間人々から隠されていた。わたしは、マタイによる福音書全体について説教する。……わたしは、聖書の泉だけからくみ、その深さを探り、聖句を聖句と比較して、熱心で絶えまない祈祷によって理解力が与えられるように求める。わたしは、神の栄光と神の独り子の賛美と、魂の真の救いと真の信仰の成長のために、聖職に献身する」と彼は言った。聖職者たちの中には彼の計画に反対し、そうさせまいとする者もあったが、ツウィングリは堅く立って動かなかった。何も新しい方法ではなくて、初期の純潔であった時代に用いられていた古い方法をとり入れようとしているのだと彼は言明した。 GCJap 204.3
すでに彼が教える真理に対する興味が呼び起こされ、多くの人々が彼の説教を聞くために群がってきた。彼の聴衆の中には、長い間集会に来ていなかった者も多かった。彼は福音書を開き、キリストのご生涯、教え、その死に関する霊感の記述を読んで説明することをもって、彼の聖職の開始とした。彼は、アインジーデルンにおけると同様に、ここでも、神の言葉を唯一不変の権威あるものとし、キリストの死を唯一の完全な犠牲として示した。「わたしはあなたがたを、キリストへ、すなわち、救いの真の源であるキリストへ導きたいと願っている」と彼は言った。説教者のまわりには、政治家や学者から職人、農民にいたるまで、あらゆる階級の人々が押し寄せた。非常な興味をもって、彼らは彼の言葉に聞き入った。彼は、惜しみなく与えられる救いが提供されていることを宣言するだけでなく、当時の害悪と腐敗を恐れることなく譴責した。多くの者は、神をあがめつつ大聖堂を去っていった。「この人は、真理の説教者である。この人は、われわれをエジプトの暗黒から救い出すモーセである」と彼らは言った。 GCJap 205.1