ここで、もう一つの象徴が紹介される。預言者は、次のように言っている。「わたしはまた、ほかの獣が地から上って来るのを見た。それには小羊のような角が二つあっ」た(黙示録13章11節)。この獣の外見と出現の模様はともに、それがあらわしている国家が、それに先立ってさまざまな象徴のもとにあらわされた国々とは異なっているということを示している。世界を支配してきた強国は、「天の四方からの風が大海をかきたて」た時にあらわれた猛獣として、ダニエルに示された(ダニエル書7章2節)。黙示録17章では、天使が、水は「あらゆる民族、群衆、国民、国語」をあらわしていると説明した(黙示録17章15節)。風は、争闘を象徴している。天の四方からの風が大海をかきたてるとは、諸国が権力を握るために起こした征服と革命の恐るべき光景をあらわしている。 GCJap 503.2
しかし、小羊のような角をもった獣は、「地から上って来る」のが見えたのであった。このようにあらわされる国は、自国を確立するために他の諸国を覆すのではなくて、まだだれにも占有されていない領土に起こり、徐々にまた平和のうちに成長する国でなければならない。したがって、旧世界の込み合った争い合う国々の中、すなわち、あの「民族、群衆、国民、国語」の荒海の中からは起こり得ないのである。それは、西半球の大陸に求められねばならない。 GCJap 504.1
一七九八年に、新世界のどんな国が、勢力を伸ばし、将来強大な国家になる可能性を示して、世界の注目を集めていたであろうか。この象徴が、どの国に適用されるかは、実に明白である。この預言の指示するところに合致する国は、ただ一つしかない。それは、疑いもなく、アメリカ合衆国を指している。弁論家や歴史家は、この国の起源と成長を描写するのに、無意識のうちに、聖書記者の思想を、またほとんど同じ言葉を、繰り返し用いてきた。獣は、「地から上って来る」のが見えた。そして、翻訳者たちによれば、ここで「上って来る」と訳されている言葉は、字義どおりには、「植物のように生長する、または、生える」という意味である。そして、すでに見たように、その国は、どの国にも占有されていない領土に起こらなければならない。ある有名な著者は、米国の出現を描写して、「その空虚からの出現の神秘」について語り、「黙した種子のように、われわれは成長して帝国になった」と述べている。一八五〇年にヨーロッパのある雑誌は、米国のことを、「現れ出て」、「地の沈黙の中で日ごとにその権力と誇りを増しつつある」不思議な帝国、と述べた。 GCJap 504.2
また、エドワード・エベレットは、同国の建設者である清教徒たちについての演説の中で、「彼らは、ライデンの小さな教会が良心の自由を享受することができるところを、人跡まれで、人目につかず、安全な遠隔の地に求めたのであろうか。彼らが、平和的征服のうちに、……十字架の旗をかかげた……巨大な地域を見よ!」と言った。 GCJap 505.1