法王が長期間にわたって至上権を握っていた時、地上は暗黒に覆われたが、しかし、その中にあって、真理の光が全く消えてしまったわけではなかった。どの時代にも神の証人がいた。キリストを神と人間との間の唯一の仲保者として信じ、人生の唯一の規準として聖書を受け入れ、そして真の安息日を尊んだ人々がいたのである。こうした人々に世界が負うところいかに大であるか、後世の人々には決してわからないであろう。彼らは異端者の烙印を押され、その動機は非難され、その品性は中傷され、そして彼らの書き物は禁圧され、誤り伝えられ、骨抜きにされた。しかし彼らは堅く立った。そして、きたるべき時代のための神聖な遺産として、彼らの信仰を、代々、純潔に保ったのである。 GCJap 71.1
ローマが至上権を握ってからの、暗黒時代における神の民の歴史は天に記録されているが、人間の手になる記録には、あまり記されていない。彼らを迫害した者たちによる非難以外には、彼らの存在の形跡はほとんどない。教義や命令に異議を唱えるものは、あとかたもなく抹殺してしまうことが、ローマの政策であった。教会は、人間であろうが書物であろうが、異端的 なものはすべて滅ぼそうとした。法王の教義の権威に対する疑惑や質問を表明するだけで、貧富、貴賎の別なく、生命を奪われるのに十分であった。またローマは、反対者に対する教会の残酷な行為の記録を、すべて消滅させようとした。法王による宗教会議は、こうした記事が載っている書物や文書を焼却することを命じた。印刷機が発明される前は、書物の数も少なく、その形も保存には向いていなかったので、彼らの目的の遂行を妨げるものはほとんどなかった。 GCJap 71.2
ローマの管轄内にあるどの教会も、良心の自由をいつまでも保つことはできなかった。法王権は、権力を握るとすぐ、その支配を認めない者をみな粉砕するために、手を伸ばした。こうして諸教会は、次々とその支配下に陥った。 GCJap 72.1