まもなく彼は、ふたたび会議に引き出された。彼の服従は、まだ裁判官たちを満足させてはいなかった。血に渇いた彼らは、フスの死によって刺激されて、新たな犠牲を求めてやまなかった。 GCJap 129.1
ヒエロニムスは、真理を無条件で放棄するのでなければ、生命を全うすることはできなかった。しかし彼は、信仰を告白し、殉教者フスのあとに続いて火刑になる決心をしていた。 GCJap 129.2
彼は自説撤回を取り消した。そして、死を前にした人間として、弁明の機会が与えられることを厳粛に要求した。しかし、彼の言葉の影響を恐れた司教たちは、ただ彼に対する告訴に対して、それを認めるか否かだけを答えるようにと言い張った。ヒエロニムスは、そのような残酷と不正に対して抗議した。「あなたがたはわたしを、不潔で有害で悪臭を放ち、何一つない恐ろしい牢獄に、三四〇日も閉じ込めておいた。そして今度はわたしを引き出し、わたしの憎むべき敵には耳を貸しながら、わたしの言うことは聞こうともしない。……もしもあなたがたが、真に賢き者であり、世の光であるならば、正義に対して罪を犯さないように気をつけるべきである。わたしはといえば、一人の弱い人間に過ぎない。わたしの生命など、どうでもよいのだ。わたしがあなたがたに、不正な宣告を下さぬように勧めるのは、自分のためよりも、あなたがたのためを思って言っているのだ」と彼は言った。 GCJap 129.3
彼の要求は、ついに許された。ヒエロニムスは、彼の裁判官たちの前でひざまずき、神の霊が彼の思想と言葉とを支配し、真理に反することや、主にふさわしくないことを語らないようにと祈った。彼にとって、この日、最初の弟子たちに対する神の約束が成就したのである。「またあなたがたは、わたしのために長官 GCJap 129.4
たちや王たちの前に引き出されるであろう。……彼らがあなたがたを引き渡したとき、何をどう言おうかと心配しないがよい。言うべきことは、その時に授けられるからである。語る者は、あなたがたではなく、あなたがたの中にあって語る父の霊である」(マタイ10章18~20節)。 GCJap 130.1
ヒエロニムスの言葉は、彼の敵たちの中にさえ、驚きと賞賛を引き起こした。彼は、丸一年の間牢獄に監禁され、読むことも見ることさえもできずに、非常な肉体的苦痛と精神的不安のうちに過ごしたのであった。 GCJap 130.2
しかし彼の論旨は、なんの妨げもなく研究を継続した者のように、明快で力に満ちていた。彼は、不正な裁判官たちによって有罪の宣告を下された数多くの聖徒たちを、聴衆に示した。ほとんどどの時代においても、その時代の人々を啓蒙しようとして、恥辱をこうむって追放され、そして後年になってあがめられた人々がいた。キリストご自身も、不正な法廷において、犯罪人として有罪を宣告された。 GCJap 130.3
ヒエロニムスは、前に自説を撤回した時に、フスの有罪の宣告は正当であると承認したが、悔い改めを宣言した今は、殉教したフスの無罪と潔白を証言した。「わたしは子供の時から彼を知っている。彼は、ただしく聖く、最も優れた人物である。彼は、罪がないのに有罪の宣告を受けた。……そしてわたしも、また。―わたしは死ぬ覚悟でいる。わたしは、わたしの敵と偽りの証人たちが用意している責め苦にひるまない。彼らは、やがて、欺くことのできない大いなる神の前で、自分たちの欺瞞行為の申し開きをしなければならないのだ」 GCJap 130.4