第43章 目に見えない守護者
- 序
- 第1章 ソロモン王の選択
- 第2章 エルサレム神殿の建設
- 第3章 繁栄の落とし穴
- 第4章 権力者が倒れるとき
- 第5章 ソロモン王の改心
- 第6章 王国の分裂
- 第7章 悲劇の王ヤラベアム
- 第8章 急速にひろがった背信
- 第9章 預言者エリヤの出現
- 第10章 罪を責める声
- 第11章 カルメル山の対決
- 第12章 砂漠へ逃れる預言者
- 第13章 失敗から立ちあがる
- 第14章 預言者エリヤの力
- 第15章 妥協するヨシャパテ王
- 第16章 アハブ家の没落
- 第17章 預言者エリシャの召し
- 第18章 悪水を良水にかえる
- 第19章 平和をつくり出す人
- 第20章 大国シリヤからの訪問者
- 第21章 預言者工リシャの貢献
- 第22章 アッスリヤの首都ニネベ
- 第23章 大国アッスリヤの支配
- 第24章 破滅を定めるもの
- 第25章 預言者イザヤの召し
- 第26章 「あなたがたの神を見よ」
- 第27章 大国に援助を求めたアハズ王
- 第28章 熱心な改革者ヒゼキヤ王
- 第29章 虚栄のつけ
- 第30章 大国アッスリヤからの解放
- 第31章 諸国民の希望
- 第32章 暗黒時代をもたらしたマナセ王と改革の星ヨシヤ王
- 第33章 律法の書の発見
- 第34章 立ちあがった預言者エレミヤ
- 第35章 破滅が近い
- 第36章 ユダ王国の最後の王
- 第37章 バビロン捕囚
- 第38章 暗黒を貫く光
- 第39章 バビロン王宮の4青年
- 第40章 ネブカデネザル王の夢
- 第41章 火の燃える炉からの救い
- 第42章 真の偉大さとは何か
- 第43章 目に見えない守護者
- 第44章主義に固く立つ
- 第45章 バビロン捕囚から帰る
- 第46章敵対者に直面して
- 第47章大祭司ヨシュアと天使
- 第48章 権力をこえる力
- 第49章 王妃エステルの決心
- 第50章 学者エズラに導かれた改革
- 第51章 精神の大覚醒
- 第52章 総督ネヘミヤの活躍
- 第53章 市街の建てなおし
- 第54章 搾取に対する譴責
- 第55章 隣国の陰謀
- 第56章 律法の公布
- 第57章 改革が始まる
- 第58章 救い主を待望する人々
- 第59章 理想のイスラエル
- 第60章 栄光にみちた国が来る
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第43章 目に見えない守護者
ダニエルの生涯の晩年になって、彼と彼のヘブルの仲間たちが60年以上も前に捕らえられてきた国に、大きな変化が起こりつつあった。「もろもろの国民の最も恐れて」いたネブカデネザルはすでに亡く(エゼキエル28:7)、「全地の人の、ほめたたえた」バビロンは(エレミヤ51:41)、彼の後継者たちの愚かな配下に移り、徐々にではあるが確実に崩壊していた。PK 581.9
ネブカデネザルの孫のベルシャザラレの愚行と柔弱とによって、高慢なバビロンはやがて倒れるのであった。ベルシャザルは青年時代からモ権を共有することを許されたので、権力を誇り、天の神に対して高慢な心を抱いた。彼には神のみこころを知り、それに服従する責任があることを理解する機会は数多くあったのである。彼は祖父が神の命令の下に、人間の社会から追放されたことを知っていた。またネブカデネザルの改心と、奇跡的回復のことをよく知っていた。しかしベルシャザルは快楽の愛好と自己称揚によって、彼が忘れてはならない教訓を消し去ってしまった。彼は恵みのうちに与えられた機会をむだにし、もっと深く真理を知るために身近にあった手段を活用することを怠った。ネブカデネザルが言うに言われぬ苦難と屈辱によってついに得たところのものを、ベルシャザルはなんの関心も示さず見過ごした。PK 581.10
間もなく不運がやってきた。バビロンは、メデア人ダリヨスの甥で、メデアとペルシャの連合軍の司令官であったクロスの包囲を受けた。しかし酒色にふけったベルシャザルは、ユフラテ川に守られ、巨大な城壁と青銅の門のついた難攻不落と思われた城塞の中で、十分な食糧の貯蔵もあったために、少しも憂えることなく歓楽と酒宴に日を過ごしていた。PK 581.11
ベルシャザルは誇り高ぶって、危険を物ともせず、「その大臣1000人のために、盛んな酒宴を設け、その1000人の前で酒を飲んでいた」(ダニエル5:1)。富と権力が手にすることのできるあらゆる呼びものが、宴会に華麗さをそえた。王宮の宴会に出席していた客の中には、魅惑的な美しい女たちがいた。才能のある人や教育のある人がいた。総督たちや政治家たちは、酒を水のように飲んで気も狂わんばかりに騒いだ。PK 581.12
恥をもわきまえずに酔いつぶれて理性を失い、低級な衝動と情欲のおもむくままに、王自身が底ぬけ騒ぎの先頭に立った。酒宴が進むにつれて、王は「ネブカデネザルがエルサレムの神殿から取ってきた金銀の器を持ってこいと命じた。王とその大臣たち、および王の妻とそばめらが、これをもって酒を飲むためであった」(同5:2)。王は、自分の手が触れることができないほどに神聖なものはないことを証明しようとしたのである。「そこで人々はそのエルサレムの神の宮すなわち神殿から取ってきた金銀の器を持ってきたので、王とその大臣たち、および王の妻とそばめらは、これをもって飲んだ。すなわち彼らは酒を飲んで、金、銀、青銅、鉄、木、石などの神々をほめたたえた」(同5:3、4)。PK 582.1
ベルシャザルは天の警護者が、彼の偶像をたたえる酒宴を眺めていたことを夢想だにしなかった。目には見えない天の警護者が、神を汚す光景を眺め、神を冒濱する歓楽を聞き、偶像礼拝を目撃したのを少しも知らなかった。しかし間もなく、招かれなかった天の客はその存在を明らかにした。酒宴がたけなわになったとき、青ざめた手が現れて、宮殿の壁に火のように燃える文字を書いた。それは多くの人々には分からない言葉であったが、今や良心に責めを感じた王や客たちの、破滅の前兆であった。PK 582.2
騒々しい歓楽の声は静まり、男も女も名状しがたい恐怖におののいて、手が不思議な文字をゆっくりつつるのを見守った。彼らの目の前には、彼らの邪悪な生活の行状がパノラマのように現れた。彼らはたった今までその力に挑んでいた、永遠の神の審判廷に召し出されたように感じたのである。つい先程まで騒いで冒漬的な言葉を言っていた人々の顔が青ざめて、恐怖の叫びをあげている。PK 582.3
彼らすべての中で最も恐怖におののいたのは、ベルシャザルであった。バビロン国内において、その夜極限に達した神に対する反逆の責任は、他のだれよりもベルシャザルにあったのである。王は神の力に挑戦し、神のみ名を冒漬したのであったが、その神の代表者である目に見えない警護者の前で、恐怖のために体が麻痺してしまった。良心が目覚めた。PK 582.4
「その腰のつがいはゆるみ、ひざは震えて互に打ちあった」(ダニエル5:6)。ベルシャザルは不敬にも、天の神に逆らって自ら高ぶった。そして「あなたはどうして、このようなことをするのか」とだれも言わないと思って、自分自身の力に頼ったのであるが、彼は今、自分に委ねられたものの責任を問われなければならないことを悟った。そして、彼の失われた機会と、反抗的態度に対しては、何の申し開きもできないことを知ったのである。PK 582.5
王は燃える文字を読もうとしたが、読むことができなかった。しかしここに、王が計り知ることのできない秘密と、理解することも反論することもできない力があった。彼は失望して、国内の知者たちの助けを求めた。文字を読むように、法術士、カルデヤ人、占い師らを呼ぶ王の気違いじみた声が、会場にひびき渡った。「この文字を読み、その解き明かしをわたしに示す者には紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけさせて、国の第三のつかさとしよう」と王は約束した。しかし、王が莫大な報賞を与えることを約束して、信頼した助言者たちに訴えても何の効果もなかった。天の知恵は売り買いすることができるものではない。「王の知者たちは皆……その文字を読むことができずまたその解き明かしを王に示すことができなかった」(ダニエル5:7、8)。彼らは前の時代の知者たちがネブカデネザルの夢の解き明かしをすることができなかったのと同様に、不思議な文字を読むことができなかった。PK 582.6
そこで王妃は、半世紀以上も前にネブカデネザル王に巨像の夢とその解き明かしを示したダニエルを覚えていたのである。王妃は言った、「『王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。あなたは心に思い悩んではなりません。また顔色を変えるには及びません。あなたの国には、聖なる神の霊のやどっているひとりの人がおります。あなたの父の代に、彼は、明知、分別および神のような知恵のあることをあらわしました。……ネブカデネザル王は、彼を立てて、博士、法術士、カルデヤびと、占い師らの長とされ ました。彼は、王がベルテシャザルという名を与えたダニエルという者ですが、このダニエルには、すぐれた霊、知識、分別があって、夢を解き、なぞを解き、難問を解くことができます。ゆえにダニエルを召しなさい。彼はその解き明かしを示すでしょう』。PK 582.7
そこでダニエルは王の前に召された。」ベルシャザルは平静を取りもどそうと努力しながらダニエルに言った。「あなたは、わが父の王が、ユダからひきつれてきたユダの捕囚のひとりなのか。聞くところによると、あなたのうちには、聖なる神の霊がやどっていて、明知、分別および非凡な知恵があるそうだ。わたしは、知者、法術士らを、わが前に召しよせて、この文字を読ませ、その解き明かしを示させようとしたが、彼らは、この事の解き明かしを示すことができなかった。しかしまた聞くところによると、あなたは解き明かしをなし、かつ難問を解くことができるそうだ。それで、あなたがもし、この文字を読み、その解き明かしをわたしに示すことができたなら、あなたに紫の衣を着せ、金の鎖を首にかけさせて、この国の第三のつかさとしよう」(同5:10~16)。PK 583.1
ダニエルはあの恐怖に襲われた群衆の前で、王の約束にも心を動かされることなく、至高者のしもべとしての冷静な威厳をもって立ち、へつらいではなくて破滅の言葉を解き明かしたのである。「あなたの賜物は、あなたご自身にとっておき、あなたの贈り物は、他人にお与えください。それでも、わたしは王のためにその文字を読み、その解き明かしをお知らせいたしましょう」(同5:17)。PK 583.2
預言者タしエルはまず第一に、ベルシャザルがよく知っていることを思い起こさせた。しかし彼は、彼を救うに至ったであろう謙遜の教訓を、それから学んでいなかった。ダニエルはネブカデネザルの罪と堕落、および彼に対する神の処置について語った。すなわち、神は彼に国と栄光をお与えになったが、彼の誇りは神の刑罰を招くに至り、彼はついにイスラエルの神の力と憐れみとを認めるに至った。そしてダニエルは、勇敢に力強い言葉で、ベルシャザルの大いなる罪悪を譴責したのである。ダニエルは王の前に彼の罪を示し、彼が学ぶべくして学ばなかった教訓を指摘した。ベルシャザルは祖父の経験を正しく理解せず彼自身にとって非常に重要な諸事件の警告に心を留めなかった。真の神を知って服従する機会がベルシャザルに与えられていたのであるが、彼はそれを心に留めなかった。そして今、彼は反逆の実を刈り取ろうとしていた。PK 583.3
預言者ダニエルは言った。「ベルシャザルよ、あなたは……この事をことごとく知っていながら、なお心を低くせず、かえって天の主にむかって、みずから高ぶり、その宮の器物をあなたの前に持ってこさせ、あなたとあなたの大臣たちと、あなたの妻とそばめたちは、それをもって酒を飲み、そしてあなたは見ることも、聞くことも、物を知ることもできない金、銀、青銅、鉄、木、石の神々をほめたたえたが、あなたの命をその手ににぎり、あなたのすべての道をつかさどられる神をあがめようとはしなかった。PK 583.4
それゆえ、彼の前からこの手が出てきて、この文字が書きしるされたのです」(ダニエル5:22~24)。PK 583.5
預言者ダニエルは壁に書かれた天からの言葉に目を向けて、「メネ、メネ、テケル、ウパルシン」と読んだ。文字を書いた手はもはや見えなかったが、これらの4つの文字は、なお恐ろしいばかりの鮮やかさで光っていた。そして人々は息を殺して、年老いた預言者の宣言する言葉に耳を傾けたのである。PK 583.6
「その事の解き明かしはこうです。メネは神があなたの治世を数えて、これをその終りに至らせたことをいうのです。テケルは、あなたがはかりで量られて、その量の足りないことがあらわれたことをいうのです。ペレスは、あなたの国が分かたれて、メデアとペルシャの人々に与えられることをいうのです」(同5:26~28)。PK 583.7
あの狂った酒宴の最後の夜、ベルシャザルと彼の総督たちは、彼らの罪の升目とカルデヤ王国の罪の升目を満たした。神の抑制の手は、もはや切迫した災いを防ぐことができなかった。神は数限りない摂理によって、神の律法に対する尊崇を彼らに教えようとなさった。彼はその罰が天に達しようとしてい る人々について、「われわれはバビロンをいやそうとしたが、これはいえなかった」と言われた(エレミヤ51:9)。神は人間の心の不可解な邪悪さのゆえに、ついに取り消すことのできない宣告を発しなければならなかったのである。ベルシャザルは死んで、彼の王国は人の手に渡るのであった。PK 583.8
ダニエルが語り終えた時に、王は彼に約束した栄誉を与えるように命令を下した。それに応じて、「ダニエルに紫の衣を着せ、金の鎖をその首にかけさせ、彼について布告を発して、彼は国の第三のつかさであると言わせた」(ダニエル5:29)。PK 584.1
1世紀以上も前に霊感による筆者は、王も大臣たちも互いに競って神を冒瀆した「歓楽の夜」が、突然恐怖と破滅の時と変わることを預言した。そして今や、急速に重大な事件が相次いで起こり、劇の主役たちが生まれる前に聖書に描かれたとおりになっていった。PK 584.2
王はすでに破滅の運命にある人々に取り囲まれてなお酒宴の席にあるうちに、敵の策略にも安全であると思っていた「町はことごとく取られ、渡し場は奪われ……兵士はおびえている」と聞かされたのである(エレミヤ51:31、32)。王とその大臣たちが主の聖なる器で酒を飲み、銀や金の神々をほめたたえていた時に、メデヤとペルシャ人たちはユフラテ川の流れを変更して、無防備の都の中心に侵入していた。今やクロスの軍勢は宮殿の壁の下に立った。都の中には敵の軍勢がいなごのように満ちあふれ(同51:14参照)、驚いた酒宴の客の絶望的な叫びを越えて、彼らの勝ちどきが聞こえた。PK 584.3
「カルデヤびとの王ベルシャザルは、その夜のうちに殺され」、外国の王が位についたのである(ダニエル5:30)。PK 584.4
ヘブルの預言者たちは、バビロンが滅亡する様子について明白に語っていたのである。神は彼らに、夜の幻の中で、将来のでき事を啓示されたのである。彼らは叫んで言った。「ああ、バビロンはついに取られた、全地の人の、ほめたたえた者は捕らえられた。ああ、バビロンはついに国々のうちに驚きとなった」。「ああ、全地を砕いた鎚はついに折れ砕ける。ああ、バビロンはついに国々のうちの恐るべき見ものとなる」。「バビロンが取られたとの声によって地は震い、その叫びは国々のうちに聞える」(エレミヤ51:41、50:23、46)。PK 584.5
「バビロンはたちまち倒れて破れた」。「滅ぼす者がこれに臨み、バビロンに来た。その勇士たちは捕らえられ、その弓は折られる。主は報いをする神であるから必ず報いられるのだ。わたしはその君たちと知者たち、おさたち、つかさたち、および勇士たちを酔わせる。彼らは、ながい眠りにいり、目をさますことはない。万軍の主と呼ばれる王がこれを言われる」(同51:8、56、57)。PK 584.6
「バビロンよ、わたしは、おまえを捕らえるためにわなをかけたが、おまえはそれにかかった。そしておまえはそれを知らなかった。おまえは主に敵したので、尋ね出され、捕らえられた。主は武器の倉を開いて、その怒りの武器を取り出された。主なる万軍の神が、カルデヤびとの地に事を行われるからである」。PK 584.7
「万軍の主はこう言われる、イスラエルの民とユダの民は共にしえたげられている。彼らをとりこにした者はみな彼らを固く守って釈放することを拒む。彼らをあがなう者は強く、その名は万軍の主といわれる。彼は必ず彼らの訴えをただし、この地に安きを与えるが、バビロンに住む者には不安を与えられる」(同50:24、25、33、34)。PK 584.8
こうして「バビロンの広い城壁は地にくずされ、その高い門は火に焼かれる」。こうして万軍の主は、「高ぶる者の誇をとどめ、あらぶる者の高慢を低くする」。こうして、「国々の誉であり、カルデヤびとの誇である麗しいバビロンは、神に滅ぼされたソドム、ゴモラのようになる。ここにはながく住む者が絶え、世々にいたるまで住みつく者がなく、アラビヤびともそこに天幕を張らず、羊飼もそこに群れを伏させることがない。ただ、野の獣がそこに伏し、ほえる獣がその家に満ち、だちょうがそこに住み、鬼神がそこに踊る。ハイエナはその城の中で鳴き、山犬は楽しい宮殿でほえる」。「わたしはこれをはりねずみのすみかとし、水 の池とし、滅びのほうきをもって、これを払い除く、と万軍の主は言う」(同51:58、イザヤ13:11、19~22、14:23)。PK 584.9
バビロンの王の象徴としてその最初の王に語られたのと同様に、その最後の王にも、「王よ、あなたに告げる。国はあなたを離れ去った」という神の警護者の宣告が下されたのである(ダニエル4:31)。PK 585.1
わが嗣業を汚して、これをあなたの手に渡した。PK 585.10
『ただわたしだけで、わたしのほかにだれもない』とPK 585.33
あなたが若い時から勤め行ったあなたの魔法と、PK 585.40
あなたは多くの計りごとによってうみ疲れた。PK 585.44
自分の身を炎の勢いから、救い出すことができなPK 585.49
活動の舞台に上った国はすべて、警護者と聖なるおかたのみこころを達成するかどうかということを決めるために、地上でその地位を占めることが許される。預言はバビロン、メド・ペルシャ、ギリシア、ローマなどの、世界の大帝国の興亡の歴史を記している。これらの国々においても、弱小国家の場合と同様に歴史がくり返されているのである。それぞれの国にテストの期間が与えられた。そして、それぞれの国がその試練に失敗して、その栄光は消え、その力は去っていった。PK 585.53
強国が神の原則を拒否し、その拒否のゆえに国家の滅亡を招いたのであったが、それでもなお、すべてを支配する神のみこころが、各時代を通じて著しく働いていたのである。預言者エゼキエルが捕囚期間にカルデヤの地において与えられた、驚くべき幻の中 で見たものはこれであった。地上の王たちのでき事を支配する神の力をあらわした象徴が、驚く彼の眼前に描き出された。PK 585.54
エゼキエルはケバル川の岸辺で、「激しい風と大いなる雲が北から来て、その周囲に輝きがあり、たえず火を吹き出していた。その火の中に青銅のように輝くものがあ」るのを見た。数多くの輪が互いに入り組み、4つの生きものによって動かされていた。そうしたもののはるか上方に、「サファイヤのような位の形があった。またその位の形の上に、人の姿のような形があった」。「ケルビムはその翼の下に人の手のような形のものを持っているように見えた」(エゼキエル1:4、26、10:8)。輪は複雑に込み入っていて、いかにも一見混乱しているように思われた。しかしそれらは、完全な調和を保って動いていた。ケルビムの翼の下の手によって支えられ、導かれていた天の存在者がこれらの輪を推進していた。彼らの上のサファイヤの玉座の上には、永遠の神が座しておられた。そしてみ座の周りには、神の憐れみを象徴した虹があった。PK 586.1
入り組んだ輪がケルビムの翼の下の手によって導かれていたように、人間の世界の複雑なでき事も、神の支配のもとにおかれているのである。国々の争闘と騒乱のさ中にあって、ケルビムの上に座しておられる主が、なおもこの世界のでき事を導いておられるのである。PK 586.2
諸国の歴史は、今日われわれに語っている。神はすべての国とすべての人間に、神の大いなる計画の中における場所をお定めになられた。今日、人々もまた国々も、誤られることのない神の手の中にあるおもりによって量られているのである。各々は自分自身の選択によって、各自の運命を決定している。そして神はそのすべてを支配して、みこころを達成しておられるのである。PK 586.3
わたしは有るという偉大な神が、み言葉の中にお与えになった預言は、永遠の過去から永遠の未来に至るまでの諸事件を1つ1つつなぎ合わせて、われわれが今日、時代の推移の中のどこに位するかを告げ、また将来何が起こるかを示していろのである。預言が、起こると予告したことはすべて、現白三まで歴史のベージをさかのぼることができるのであるから、これから起こることもすべて、その順序どおりに成就するものと確信してよいのである。PK 586.4
今日、時のしるしは、われわれが重大で厳粛な事件の門口に立っていることを告げているわれわれの世界のすべてのものは動揺している、再臨に先立って起こるでき事に関する救い主の預言が、われわれの眼前で成就している。「また、戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。……民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに、ききんが起り、また地震があるであろう」(マタイ24:6、7)。PK 586.5
現代はすべての人間にとって、圧倒的に興味深い時である。統治者や政治家たち、信頼と権威の座を占める人々、各階層の識者たちは、われわれの周りに起こっているでき事に注意を集中している。彼らは国家間の関係を見守っている。彼らは地上の勢力が緊張度を増しているのを観察する。そして彼らは、重大で決定的な何事かが起ころうとしており、今や世界は、驚くべき危機の瀬戸際に立っているのを認めるのである。PK 586.6
こうした事柄については、聖書、そして聖書だけが、その正しい見解を示しているのである。ここにわれわれの世界の歴史の、大いなる最後の光景が示されている。そのでき事はすでにその影を投げ1接近する音は地を震わせ、人の心を恐怖におののかせている。PK 586.7
全能者からの滅びのように来るからである。……PK 587.3
「ぶどうの木は枯れ、いちじくの木はしおれ、PK 587.10
ざくろ、やし、りんご、野のすべての木はしぼんだ。PK 587.11
それゆえ楽しみは人の子らからかれうせた」。PK 587.12
ラッパの声と、戦いの叫びを聞くからである。PK 587.16
「悲しいかな、その日は大いなる日であって、PK 587.20
しかし彼はそれから救い出される」。(同307)PK 587.23
主はその所であなたを敵の手からあがなわれる。PK 587.30
いま多くの国民はあなたに逆らい、集まって言う、PK 587.31
われわれの目がシオンを見てあざ笑うように』と。PK 587.33
神はご自分の教会を、その最大の危機の時にお捨てになることはない。神は救いを約束された。PK 587.37
「見よ、わたしはヤコブの天幕を再び栄えさせ、そのすまいにあわれみを施す」と主は言われたのである(エレミヤ30:18)。PK 587.38