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各時代の大争闘 - Contents
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    神との格闘

    このように願い出ることによって、ルターは賢明にふるまった。彼の態度は、彼が感情や衝動にかられて行動しているのではないことを、集まった人々に確信させた。この沈着と自制は、これまで大胆で妥協することのなかったルターには期待できなかったことで、これが彼に力を増し加え、後に、彼が慎重、決断、知恵、威厳をもって答弁する——そのことは彼の敵に驚きと失望を与え、また彼らの高慢と不遜を譴責するものであったが——ことを可能にしたのであった。GC 1665.4

    翌言、彼は最後の答弁をするために現れることになっていた。一時、彼は、真理に対抗して結束した勢力のことを考えて、気がめいった。彼の信仰は揺らぎ、彼は恐怖と戦慄に襲われ、恐怖感に圧倒された。彼の前に危険は増大した。彼の敵は、まさに勝利しようとしているように見え、暗黒の勢力がまさに勝とうとしているように思われた。彼の周りには暗雲がたれこめ、彼を神から引き離すように思われた。彼は、万軍の主が彼と共におられるという確証を熱望した。彼は苦悶のあまり、地の上に突伏して、神のほかはだれにも理解できないところの、切れ切れの悲痛な叫びをあげた。GC 1665.5

    彼は嘆願した。「ああ、全能で永遠の神よ、この世界はなんと恐ろしいことでしょうか。世は言を開いて、わたしをのみこもうとし、しかもあなたに対するわたしの信仰は、まことに弱いのです。……わたしがこの世の力だけに信頼しなければならないのなら、万事は終わりです。……わたしの最後の時が来ました。わたしはすでに有罪の宣告を受けました。……ああ、神よ、世紀のすべての知恵に対抗してわたしを助けてください。……あなただけが……わたしをお助けください。これはわたしの業ではなく、あなたの業だからです、わたしには何もできません。これら世の偉大な人々と闘うものは何もありません。……しかし、この事業はあなたのものです。……しかもそれは、正しくて永遠の事業です。ああ主よ、わたしをお助けくだ さい。真実で不変の神よ、わたしは人には信頼を置きません。……人間はすべて不確かで、人間のものはみな失敗に終わります。……あなたはわたしを、この仕事のためにお選びになりました。……わたしの力、盾、わたしの高きやぐらであられる愛するみ子イエス・キリストのゆえに、わたしのそばに立ってください。」 19GC 1665.6

    全知の神の摂理は、ルターが自分の力に頼って僣越に危険の中に飛び込まないように、その危険をルターに自覚させられた。しかしそれは、目前に迫るように思われた苦灘や、死の拷問の恐怖が、彼を圧倒したのではなかった。彼は危機に直面していた。そして彼は、それに対する自分の無力さを感じたのであった。GC 1666.1

    彼の弱さのために、真理の運動が敗北するかも知れなかった。自分自身の安全のためではなく、福音の勝利のために、彼は神と格闘した。夜、寂しい川のそばで苦闘したイスラエルのように、彼は魂を注ぎ出して苦しみ闘った。そして、イスラエルのように、彼は神に勝った。彼は、自分が全く無力であることを感じ、力ある贖い主、キリストをしっかりと信仰によって捕らえた。彼は、自分1人で議会に出るのではないという確信に強められた。彼の魂に平安がかえってきた。そして彼は、神の言葉を国々の王たちの前で高めることが許されたのを喜んだ。GC 1666.2

    ルターは、神に心を置きながら、自分の前にある闘いの準備をした。彼は、答弁の方法を考え、自分の著書の文章を調べ、聖書から彼の主張を支持する適当な証拠を引用した。それから彼は、自分の前に開かれた聖書の上に左手を置き、右手を天に向けて上げ、「たとえ証言のために血を流すことがあっても、福音に忠誠をつくし、なにものにもとらわれずに自分の信仰を告白する」ことを誓った。 20GC 1666.3

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