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第56章 律法の公布 PK 631

本章はネヘミヤ8、9および10章に基づく PK 631.3

それはラッパの祭りの時であった。多くの人々がエルサレムに集まっていた。その光景は悲しむべきものであった。エルサレムの城壁は再建され、門も建てられていたが、町の大部分はまだ廃墟であった。 PK 631.4

すでに年老いたエズラは、どちらを向いても消え去ったユダの栄光を回顧させるものに取り囲まれた、大通りの一角に立てられた木の台の上に立っていた。彼の右にも左にも、レビ人たちが立っていた。彼らの目は台の上から、多くの人々を見渡した。辺り一面の地域から、契約の民が集まってきた。「エズラは大いなる神、主をほめ」た。「民は皆……『アァメン、アァメン』と……答え、こうべをたれ、地にひれ伏して主を拝した」(ネヘミヤ8:6)。 PK 631.5

とは言っても、イスラエルの罪の形跡はまだあった。人々が他国人たちと雑婚したために、ヘブル語がなまってしまった。それで、話す者は律法がすべての者によく理解されるために、それを人々の言葉で説明する必要があった。そこで祭司たちやレビ人たちのある者が、エズラと一緒になって律法の原則を説明した。「彼らはその書、すなわち神の律法をめいりょうに読み、その意味を解き明かしてその読むところを悟らせた」(同8:8)。 PK 631.6

「民はみな律法の書に耳を傾けた」(同8:3)。彼らは一心に敬虔な思いで、至高者の言葉に耳を傾けた。彼らは律法が説明されたときに自分たちの罪を悟り、それを悲しんだ。しかしこの日は祭りで喜びの日であり、聖会の日であって、主が人々に喜びと楽しみをもって守ることをお命じになった日であった。そのために彼らは悲しむことを禁じられて、彼らに対する神の大いなる憐れみのゆえに、喜ぶように命じられたのである。ネヘミヤは言った。「この日はあなたがたの神、主の聖なる日です。嘆いたり、泣いたりしてはならない。……あなたがたは去って、肥えたものを食べ、甘いものを飲みなさい。その備えのないものには分けてやりなさい。この日はわれわれの主の聖なる日です。憂えてはならない。主を喜ぶことはあなたがたの力です」(同8:9、10)。 PK 631.7

その日の初めの部分は宗教的行事のために捧げ られ、その後の時間は、神の祝福を数えて感謝し、神がお与えになった恵み深さの数々を喜んで過ごした。一部分は、何の備えもなかった貧しい人々にも送られた。律法の言葉が読まれて、それを理解できたことに対して、大いなる喜びがあったのである。 PK 631.8

次の日も、律法を読んで説明することは続いた。そして定められた日、すなわち7月10日に、神の命令に従って、晴罪の日の厳粛な儀式が取り行われたのである。 PK 632.1

同月の15日から25日まで、人々とっかさたちはもう1度、仮庵の祭りを行った。次のような布告が出された。「またすべての町々およびエルサレムにのべ伝えて、『あなたがたは山に出て行って、オリブと野生のオリブ、ミルトス、なつめやし、および茂った木の枝を取ってきて、しるされてあるとおり、仮庵を造れ』……。それで民は出て行って、それを持って帰り、おのおのその家の屋根の上、その庭、神の宮の庭……などに仮庵を造った。……それでその喜びは非常に大きかった。エズラは初めの日から終りの日まで、毎日神の律法の書を読んだ」(ネヘミヤ8:15~18)。 PK 632.2

人々が毎日律法の言葉に耳を傾けた時に、彼らは自分たちの罪を悟り、彼らの前の時代の国家の罪を悟った。神の保護のみ手が取り除かれ、アブラハムの子孫が外国の地に離散したのは、彼らが神から離反したためであることを知って、彼らは神のあわれみを求め、神の戒めに従って歩むことを誓う決意をした。仮庵の祭りが終わってから2日目に行われた、この厳粛な式を行うに当たって、彼らは自分たちの中にいる異邦人を離れた。 PK 632.3

人々が罪を告白し、神の赦しを求めて主の前にひれ伏した時に、指導者たちは、神がその約束通りに彼らの祈りを聞かれたことを信じるように、民を励ました。彼らは、ただ単に嘆き悲しみ、悔い改めるばかりではなくて、神が彼らを赦されたことを信じなければならなかった。彼らは神の憐れみを数え、神の恵み深さを賛美することによって、その信仰を示さなければならなかった。こうした教師たちは、「立ちあがって永遠から永遠にいますあなたがたの神、主をほめなさい」と言った(同9:5)。 PK 632.4

すると集まった群衆は天に向かって手を上げて立ち、次のように歌った。 PK 632.5

「あなたの尊いみ名はほむべきかな。 PK 632.6

これはすべての祝福とさんびを越えるものです。 PK 632.7

……

あなたは、ただあなたのみ、主でいらせられます。 PK 632.8

あなたは天と諸天の天と、その万象、 PK 632.9

地とその上のすべてのもの、 PK 632.10

海とその中のすべてのものを造り、 PK 632.11

これをことごとく保たれます。 PK 632.12

天の万軍はあなたを拝します」。 PK 632.13

(ネヘミヤ9:5、6) PK 632.14

賛美の歌は終わった。会衆の指導者はイスラエルの歴史を語り、彼らに対する神の恵みがいかに大きかったか、そして彼らの忘恩がいかにはなはだしかったかを示した。そして全会衆は、神のすべての戒めを守る契約を結んだ。彼らはその罪の罰を受けた。そして今、彼らは自分たちに対する神の処置の正しさを認めて、神の律法に従うことを誓った。そしてこれが、「堅い契約」となり、彼らが義務を負った記念として、永久に保存されるために記録し、祭司たち、レビびとたち、つかさたちがこれに印を押した(同9:38)。それは義務を思い起こさせるものであると共に、誘惑に対する防壁となるのであった。人々は「神のしもベモーセによって授けられた神の律法に歩み、われわれの主、主のすべての戒めと、おきてと、定めとを守り行う」ことを厳粛に誓った(同10:29)。この時の誓約の中には、その地の民と雑婚しない約束も含まれていた。 PK 632.15

断食の日の終わりに先立って、人々は安息日を汚すことをやめる誓約をして、彼らの主に帰る決意をさらに表明したのである。ネヘミヤはこの時は、後の時代のように、自分の権威によって異邦の商人たちがエルサレムに来ることを、とめてはいなかった。し かし彼は、人々が誘惑に陥ることがないように、これらの商人から買って、安息日の律法を犯さないという厳粛な誓約を彼らと結んだ。こうして彼は、商人たちが来ないようにし、彼らの商売をやめさせようとしたのである。 PK 632.16

また、神の公の礼拝を支えるための備えも行われた。会衆は10分の1のほかに、聖所の務めを維持するために、一定の額を毎年捧げることを約束した。ネヘミヤは次のように書いている。「われわれ……はくじを引いて……われわれの土地の初なり、および各種の木の実の初なりを、年々主の宮に携えてくることを誓い、また律法にしるしてあるように、われわれの子どもおよび家畜のういご、およびわれわれの牛や羊のういごを、われわれの神の宮に携えて」くることにした(同10:34、35)。 PK 633.1

イスラエルは背信を深く悲しんで、神に立ち返った。彼らは嘆きと悲しみのうちに罪を告白した。彼らは自分たちに対する神の処置の正当さを認めて、神の律法に従うことを誓った。今彼らは、神の約束に対する信仰を表さなければならなかった。神は彼らの悔い改めを受け入れられた。今彼らは、罪の赦しの確証が与えられ、神の恵みに回復されたことを喜ばなければならなかった。 PK 633.2

真の神の礼拝を回復しようとしたネヘミヤの努力は成功した。人々が彼らの誓いに忠実で、神の言葉に服従しているかぎり、主は彼らに豊かな祝福を与えて、約束を果たされるのであった。 PK 633.3

罪を悟って自分たちの無価値なことを知り、打ちひしがれている者にとって、この記録は信仰と激励の教訓を教えている。聖書はイスラエルの背信の結果をありのままに記している。しかし聖書はまた、彼らが主に帰った時の心からのへりくだりと悔い改めと、熱烈な献身と惜しみなき犠牲をも記しているのである。 PK 633.4

真に主に立ち返るごとに、生活には永続的喜びが与えられる。罪人が聖霊の感化力に服従するときに、彼は、心を読まれる偉大な主の神聖さと比較して、自分自身の罪と汚れを見るのである。彼は自分が罪に定められているのを見る。しかし彼は、そうだからといって絶望はしない。なぜならば、彼の赦しはすでに確保されたのである。彼は罪が赦されたことを感じ、罪を赦して下さる天の父の愛を喜ぶことができる。悔い改めた罪深い人間を、愛の腕にいだいてその傷を包み、罪から彼らを清め、救いの衣を彼らに着せることは、神の栄光なのである。 PK 633.5