ルターが最も厳格に守った原則の一つは、宗教改革支援のために世俗の権力に頼ったりせず、その擁護のために武力に訴えたりしない、ということであった。彼は、福音が、帝国の諸侯たちによって告白されたことを喜んだ。しかし、彼らが擁護連盟を結成することを提案した時に、彼は次のように言った。「福音の教義は、ただ神だけが擁護すべきものである。……人間の手出しが少なければ少ないほど、福音のための神の介入はいっそう著しくあらわれるであろう」「すべての用心深い予防策は、彼の意見によれば、無用な恐怖とはなはだしい不信によるものであった」 GCJap 241.1
強力な敵が、合同して改革派の信仰をくつがえそうとした時、そして、無数の剣が抜き放たれようとした時、ルターは書いた。「サタンは怒りに燃えている。不信仰な司教たちは、策を練っている。そしてわれわれは、戦争に脅かされている。われわれは、信仰と祈りによって、主のみ座の前で勇敢に神に訴えるように人々に勧め、神の霊に征服された敵が平和を求めてくるようにしよう。われわれの最大の必要、最大の仕事は祈りである。人々に、今や彼らは剣の刃とサタンの怒りにさらされていることを知らせよう。そして彼らに祈らせよう」 GCJap 241.2
後日ルターは、改革派の諸侯たちが連盟を企てたことについて再び言及して、この戦いにおける唯一の武器は「御霊の剣」でなければならないと言明した。彼 GCJap 241.3
は、ザクセンの選挙侯に書いた。「われわれは、連盟の提案には、良心的理由によって賛成できません。われわれは、福音のために一滴の血を流すよりは、むしろ一〇回死ぬほうがよいのです。われわれの側は、ほふり場の小羊のようなものです。キリストの十字架を負わねばならないのです。選挙侯よ、恐れないでください。われわれは、敵が彼らの誇りによってなすすべてのこと以上のことを、祈りによってなすのです。ただ、あなたの手を兄弟の血で汚さないでいただきたい。もし、皇帝がわれわれを裁判官に引き渡すならば、われわれは出頭する覚悟です。あなたは、われわれの信仰を擁護することはできません。各自が、自分自身の責任において、信じなければならないのです」 GCJap 242.1