さて、フランスの改革者たちは、自分たちの国がドイツやスイスと歩調を合わせるようにと熱望し、全国民に覚醒をうながすために、ローマの迷信に大打撃を加えることを決意した。そこで、ミサを攻撃したポスターが、一晩のうちにフランス国内中に貼られた。この熱心ではあるが無分別な運動は、改革を促進するどころか、その主唱者だけでなく、フランス全国の、改革主義の信仰に好意を持った人々に、破滅をもたらした。これは、ローマ側が長く欲していたこと―─異端者たちは王位の安定と国家の平和を脅かす扇動者であるとして全滅を要求する口実―─を彼らに与えた。 GCJap 259.3
不謹慎な同志であるか、それとも悪賢い敵であるのかわからなかったが、一枚の檄文が、王の寝室の扉に貼られた。王は恐怖に襲われた。この紙の中では、長年尊ばれてきた迷信が手厳しく攻撃されていた。こうした率直で驚くべき言葉が、王の前につきつけられたことは前例がなかったので、王は非常に怒った。驚きのあまり、王はしばらくぼう然として、何も言えなかった。やがて王は、怒りに満ちて恐ろしい言葉を吐いた。「ルター派と疑われるものはすべて差別なく捕らえよ。わたしは彼らを全滅させる」。さいは投げられた。王は、全的にローマ側に加担する決心をした。 GCJap 260.1
パリのルター派をすべて捕らえる手はずが直ちにとられた。改革派の信者で、秘密の集会に信者を召集していた貧しい職人が捕らえられた。彼は、火刑によって直ちに殺すと脅されて、法王側の密偵をパリの改革派一人一人の家に案内することを命じられた。彼は、卑劣な申し出に恐怖で縮みあがったが、火刑を恐れて、ついに兄弟たちを裏切ることに同意した。聖体を持つ者に先導され、司祭たち、香炉を持った者たち、修道士たち、兵士たちの行列に囲まれて、王の密偵モランは裏切り者を連れて、ゆっくりと静かに町の通りを過ぎていった。行列は見たところ「秘蹟」のためのもの、すなわち、改革派によって加えられたミサへの侮辱を償うためのものであった。しかし、この行列のかげに恐ろしい目的が隠されていた。ルター派の家の前に来ると、裏切り者は、声こそ出さなかったが合図をした。行列は止まり、その家に入って家族の者を引き出し、鎖につないだ。そして次の獲物を求めて、恐ろしい行列は進んだ。彼らは、「大きい家も小さい家も見過ごさず、パリ大学さえ見逃さなかった。……モランは、全市を戦慄させた。……それは恐怖の時代であった」 GCJap 260.2