バビロンは、「淫婦どもの母」であると言われている。その娘たちとは、彼女の教義と言い伝えを重んじてその例にならい、世との不法な同盟を結ぶために、真理と神の是認とを犠牲にする諸教会の象徴でなければならない。バビロンが倒れたことを宣言する黙示録14章のメッセージは、かつては純潔であったが腐敗するに至った宗教団体に適用されねばならない。このメッセージは審判の警告に続くものであるから、最後の時代に発せられるものでなければならない。したがって、これは、ローマ・カトリック教会だけに当てはまるものではない。なぜならば、この教会は、幾世紀にわたって倒れた状態にあったからである。さらに、黙示録18章では、神の民はバビロンから離れ去れと呼びかけられている。この聖句によれば、多くの神の民がまだバビロンにいなければならない。今、キリストに従う者の大部分は、どの宗教団体に属しているであろうか。言うまでもなく、プロテスタント各派の諸教会である。 GCJap 439.1
これらの諸教会は、その出現の当初にあっては神と真理のために崇高な態度をとり、神の祝福にあずかった。不信仰な世の人々でさえ、福音の原則を信じることに伴う恵みを認めずにはおられなかった。預言者はイスラエルに次のように言った。「あなたの美しさのために、あなたの名声は国々に広まった。これはわたしが、あなたに施した飾りによって全うされたからであると、主なる神は言われる」。しかし、彼らも、イスラエルののろいであり滅びであったのと同じ欲望―─神を信じない人々の習慣にならい、彼らとの交わりを求めようとする欲望―─によって堕落した。「あなたは自分の美しさをたのみ、自分の名声によって姦淫を行」った(エゼキエル書16章14、15節)。 GCJap 439.2
プロテスタント教会の多くは、ローマの例にならって「地の王たち」と不法な関係を結んでいる。国教会は俗権と提携することによって。また他の教派は、世俗の歓心を求めることによって。そこで、この「バビロン」(混乱)という言葉は、それぞれ自分たちの教義は聖書に基づいたものであると言いながら、ほとんど無数の教派に分かれ、互いに衝突する信条と理論を持ったこれらの諸団体に、まことによく当てはまるのである。 GCJap 439.3
諸教会は、ローマから分離していながら、世俗との罪深い結合の他にも、ローマの他の特質をあらわしている。ローマ・カトリックの一著書に、次のようにある。「もしローマの教会が、諸聖人に関して偶像礼拝の罪があるとするならば、その娘である英国国教会も同罪である。英国では、キリストにささげられた教会一つに対して、マリヤにささげられた教会が十ある」 GCJap 440.1
また、ホプキンス博士は、『千年期に関する論文』の中で次のように言っている。「反キリスト教的精神と習慣が、今、ローマ教会と呼ばれているものに限られているとみなす理由はない。プロテスタント諸教会も、その中に多くの反キリスト的なものを持っており、腐敗と罪悪……から全くぬけ切ったとは、とうてい言えない」 GCJap 440.2
長老教会がローマから分離したことに関して、ガスリー博士は次のように書いている。「今から三〇〇年前、わが教会は、開かれた聖書を旗印とし、『聖書を調べよ』をその標語として、ローマの門から進み出た」。そして彼は、次のような意味深長な質問を発するのである。「はたして彼らは、完全にバビロンから出たであろうか?」 GCJap 440.3
また、スポルジョンは言っている。「英国国教会は、徹頭徹尾、秘蹟重視主義に陥っているように思われる。しかし、非国教徒も同様に、はなはだしく哲学的不信に打ち負かされているように思われる。われわれが望みをかけていた者たちが、一人また一人と、信仰の根本から離れ去っていく。わたしは、今や英国の心臓部そのものが、のろうべき無神思想に食いつくされていると思う。それは、臆面もなくなお説教壇に上がって自らをキリスト教と称しているのだ」 GCJap 440.4