しかし、この自由を悪用した者があった。キリストに次いで最も神から栄誉を受け、天の住民の中で最高の権威と栄光を与えられていた者から罪が始まった。 GCJap 568.2
ルシファーは、堕落する前は、清く汚れのない、覆うことをなすケルビムの中の第一位の者であった。「主なる神はこう言われる、あなたは知恵に満ち、美のきわみである完全な印である。あなたは神の園エデンにあって、もろもろの宝石が、あなたをおおっていた。……わたしはあなたを油そそがれた守護のケルブと一緒に置いた。あなたは神の聖なる山にいて、火の石の間を歩いた。あなたは造られた日から、あなたの中に悪が見いだされた日まではそのおこないが完全であった」(エゼキエル書28章12~15節)。 GCJap 568.3
ルシファーは、神の恵みのうちにとどまって、全天使の愛と尊敬を受け、他の者たちの祝福となり創造主の栄えをあらわすために、その高貴な能力を働かせることができたのである。しかし預言者は、「あなたは自分の美しさのために心高ぶり、その輝きのために自分の知恵を汚した」と言っている(エゼキエル書28章17節)。次第にルシファーは、自分を高めたいという思いをほしいままにするようになった。「あなたは自分を神のように賢いと思っている」(同28章6節)。「あなたはさきに心のうちに言った、『わたしは天にのぼり、わたしの王座を高く神の星の上におき、北の果なる集会の山に座し、雲のいただきにのぼり、いと高き者のようになろう』」(イザヤ書14章13、14節)。ルシファーは、被造物の最高の愛情と忠誠心を神にささげさせようとしないで、彼らの奉仕と服従とを自分に向けさせようと努力した。この天使たちの君は、無限なるお方であられる神がみ子にお与えになっていた栄誉をほしがって、キリストだけがお用いになれる大権である権力にあこがれた。 GCJap 568.4
全天は、創造主の栄光を反映し、神を賛美することを喜びとしていた。そして神がこのようにあがめられている間は、すべては平和であり、喜びであった。しかしいま、不協和音が天のハーモニーをそこなった。創造主のご計画とは逆の、自分に仕え自分を高める思いが、神の栄光を第一としていた者たちの心に、悪の予感を感じさせた。天の会議は、ルシファーに嘆願した。神のみ子は、創造主が偉大であられ、恵み深く、公義の神であられること、そして神の律法は聖にして不変の性質のものであることを、彼に示された。神ご自身が天の秩序をお定めになったのであるから、ルシファーがそれを無視することは、創造主のみ名を汚し、自分自身を破滅させることになるのであった。 GCJap 569.1
しかし、無限の愛と憐れみをもって与えられた警告は、反抗の精神を引き起こしただけであった。ルシファーはキリストに対する嫉妬の念にかられ、ますます決意を固めた。 GCJap 569.2
自分自身の栄光に対する誇りは、主権を求める欲望を助長した。ルシファーは自分に与えられた高い栄誉を神の賜物として認めず、創造主に対して感謝の念を起こさなかった。彼は自分の聡明さと高い地位を誇り、神と同等になることを熱望した。彼は天の住民から愛され、尊敬されていた。天使たちは彼の命令を実行することを喜び、彼はすべての天使たちにまさる知恵と栄光を身につけていた。しかし神のみ子は、天の君主として、すなわち天の父と同じ権力と権威を持っておられるお方として認められていた。キリストは、神のすべての相談に参加しておられたが、ルシファーはキリストのように神の目的を知ることを許されていなかった。「なぜキリストが主権を持っておられるのか。なぜキリストがこのようにルシファーよりもあがめられるのか」と、この強力な天使は疑った。 GCJap 569.3