「わたしは恨みをおく、おまえと女とのあいだに、おまえのすえと女のすえとの間に。彼はおまえのかしらを砕き、おまえは彼のかかとを砕くであろう」(創世記3章15節)。人類の堕落後、サタンに対して下された神の宣告は、終末に至るまでの各時代にわたる預言でもあった。そしてそれは、地上に生存するすべての人類が参加する大争闘を予表していた。 GCJap 582.1
神は、「わたしは恨み〔敵意―英語訳〕をおく」と宣言された。この恨みは、人間が生まれながらに持っているものではない。人間は、神の律法を犯した時に、その性質は邪悪となり、サタンに敵対するのでなく、協調するようになった。罪人と罪の張本人との間には、当然、なんの恨み(敵意)もない。両方とも、背信によって、邪悪になった。背信者は、他の人々を自分の模範に従うよう勧誘して、同情と支持を得るまでは安んじない。こういうわけで、堕落した天使たちと悪人たちとは、絶望的なつながりで結ばれた。もしも神が特別に介入されなかったならば、サタンと人間は、天に対抗して同盟を結んだことであろう。そして、人類家族全体は、サタンに恨みをいだくのではなくて、彼と結束して神に反抗したことであろう。 GCJap 582.2
サタンは、天使たちを反逆させたように、人間を罪に誘惑し、こうして、天に対する彼の戦いにおける協力を得ようとした。キリストを憎むことに関しては、サタンと堕落した天使たちとの間に意見の相違はなかった。その他のあらゆる点に関しては、一致がなかったが、宇宙の支配者の権威に反対することについては、固く結束していた。しかし、サタンは、彼と女との間、彼のすえと女のすえとの間に恨みが存在するという宣言を聞いたとき、人間の性質を堕落させようとする彼の努力が阻止されることを知った。また、人間はなんらかの方法によって、彼の力に抵抗することができるようになることを知った。 GCJap 583.1
人類が、キリストを通して、神の愛と憐れみの対象となっているために、人類に対するサタンの敵意が燃え上がっている。彼は、人類を贖おうとする神の計画を妨害しようと望み、神のみ手のわざを傷つけ汚すことによって、神のみ栄えを汚そうと望んでいる。彼は、天を悲しませ、地を苦悩と荒廃で満たそうと望んでいるのである。そして彼は、こうした害悪はみな、神が人間を創造したために起こったと指摘する。 GCJap 583.2
人間のうちに、サタンに対する敵意を起こさせるのは、キリストが心の中に植え付けられる恵みである。この改変の恵みと更生の力とがなければ、人間は引き続きサタンの捕虜であり、常に彼の命令に従うしもべであるしかない。しかし、心の中の新しい原則が、これまで平和であったところに争闘を起こすのである。キリストがお与えになる力によって、人間は、暴君であり、横領者であるサタンに抵抗する力を得る。だれでも、罪を愛する代わりに罪を憎み、これまで心の中を支配していた欲望に抵抗して、それに打ち勝つならば、それは、全く上からの原則が働いていることを示している。 GCJap 583.3