次に議会は、ルターが彼らの前に出頭することを要求した。アレアンダーの嘆願、抗議、威嚇にもかかわらず、皇帝はついにこれに同意し、ルターは議会に出頭する命令を受けた。召喚状とともに、無事帰国することを保証した通行券も発行された。これらは、彼をウォルムスに連れてくる命令を受けた使者が、ウィッテンベルクに持ってきた。 GCJap 174.3
ルターの友人たちは、恐れ悲しんだ。彼らは、ルターに対する敵の偏見を知っていたので、彼の通行券さえ空文に帰すのではないかと懸念し、危険に身をさらさぬようにと願った。ルターは、次のように答えた。 GCJap 174.4
「法王教徒たちは、わたしがウォルムスに来ることを望まず、ただ、わたしの断罪と死を求めている。それはかまわない。わたしのためでなく、神のみ言葉のた GCJap 174.5
めに祈ってほしい。……キリストは、これら誤謬の使者たちに打ち勝つように、み霊をわたしに与えられるであろう。わたしは一生彼らを軽蔑する。わたしは死によって彼らに勝利するであろう。彼らはわたしに取り消しを強いようとして、ウォルムスで忙しく働いている。そして、わたしの取り消しは、こうである。わたしは以前、法王はキリストの代理であると言った。今、わたしは、法王はキリストの敵であり、悪魔の使徒であると断言する」 GCJap 175.1
ルターは、この危険な旅に一人で出なくてもよかった。皇帝の使者のほかに、彼の最もしっかりした三人の友人たちが、同道する決心をした。メランヒトンも、彼らに加わることを熱望した。彼の心はルターの心と結ばれていたので、彼は同行を切望し、必要ならば牢獄や死をも共にしたいと望んだ。しかし、彼の願いは許されなかった。もしルターが亡くなれば、改革の希望は、この年若い共労者を中心としなければならないのであった。ルターは、メランヒトンと別れる時に、次のように言った。「もし、わたしが帰らず、敵がわたしを殺しても、教え続けて、真理に堅く立ってほしい。わたしの代わりに働きなさい。……君が生き残るならば、わたしの死はたいしたことではないのだ」。ルターの出発を見るために集まった学生や市民は、深い感動を受けた。福音に心を動かされた群衆は、涙ながらにルターに別れを告げた。こうして、改革者ルターとその一行は、ウィッテンベルクを出発した。 GCJap 175.2