新約聖書の時代にも預言者が活躍しています。まずイエス・キリストの誕生の物語の中には、敬虔な老人シメオンのことや、女預言者アンナのことがでています(ルカ2:25~38参照)。シメオンは聖霊に感じて幼児イエスを見いだし、神にさんびをささげました。彼は幼な子イエスと母マリヤの運命について不思議な預言をしました。 PK 666.5
イエス・キリストの先駆者として現れたバプテスマのヨハネも預言者であり、「預言者以上の者」と呼ばれました。 PK 666.6
イエス・キリスト自身も人々から預言者と見られましたが、イエスの自覚においては預言者以上のものでした。彼は自分を神との特別に親密な関係にあるものとして主張しました。神を父とし、自分を子とされました。それは他の誰も入りこむことができない独自の親密な関係で、聖書はそれを「父なる神と子なる神」の関係として述へています。 PK 666.7
初期の教会の中にも預言者が活動していました。最も活発な教会の1つであったシリヤのアンテオケ教会にも預言者がいました(使徒行伝13:1)。また当時名の知られた預言者にはアガホ、ユダ、シラスなどがいます(使徒行伝11:27、28、15:32)。また伝道者ピリポの4人の娘たちも預言をしたことが知られています(使徒行伝21:9)。キリストの弟子であったヨハネは晩年に地中海の孤島パトモスで神から特別な啓示をうけ、『ヨハネの黙示録』を書きました。 PK 666.8
このように新約聖書の時代にも、教会には神のことばを聞き、それを伝える預言者が、教会内で大切な働きをしていたことがわかります(Ⅰコリント12:28)。 PK 666.9
神はどの時代にもご自身の意志を示すために預言者を呼出し、神を信じる人々に語りかけて来ました。これは実に驚くべぎことです。古代から現代に至るまで預言者の系譜をたどる時に、他の宗教には見られない神のわざの現実性を知ることができます。本書の著者であるエレン・G・ホワイト夫人は1827年に生まれ1915年に永眠しましたが、その88年にわたる生涯をくわしく辿ってみるとき、神の明らかな啓示がこの無学の女性に与えられたことを認めないわけには参りません。エレン・ホワイト女史には狂気の少しの痕跡もなく、長い一生の間神への変わらない信頼と敬虔に貫かれた歩みを残 しました。 PK 666.10
各時代にわたる預言者の記録は、神が神を信じる人々に、ご自分の意志と思想を啓示されたことの記録でもあります。つまるところ、こうして集められた記緑が聖書なのです。 PK 667.1
「聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である」と言われています(Ⅱテモテ3:16)。また預言については、「聖書の預言はすべて、自分勝手に解釈すべきでないことを、まず第一に知るべきある。なぜなら、預言は決して人間の意志から出たものでなく、人々が聖霊に感じ、神によって語ったものだからである」とも言われています(Ⅱペテロ1:20、21)。 PK 667.2
キリストが父と呼ばれた神は、神を信じる人々にご自身の現在、つまり現実の存在を示して来られました。それは預言者たちを通して示されましたが、そればかりでなく、イエス・キリストの生涯と教えによって最も完全な形でご自身を啓示されました。こうして啓示されたことは、神の現在だけでなく、人間の救いにとって必要な真理なのです。預言者はそのような神の現在と人間の救いについての真理を伝えるために召された聖なる人々ということができるでしょう。 PK 667.3