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患難から栄光へ - Contents
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    第36章 福音から離れた人々

    本章はガラテヤ人への手紙に基づくAA 1501.14

    パウロは、コリントに滞在していた時に、すでに設立されていた教会のいくつかについて、深く憂慮するところがあった。エルサレムの信者たちの中から起こった偽教師の影響によって、分裂、異端、肉欲主義が、急速にガラテヤの信者たちの間に広まっていた。これらの偽教師たちは、福音の真理にユダヤの伝承を混ぜ合わせていた。彼らは、エルサレム会議の決定を無視して、異邦人の改心者たちに礼典律を守るように勧めた。AA 1501.15

    事態は非常に深刻であった。すでに入り込んで来た害悪は、急速にガラテヤの諸教会を破壊しようとしていた。AA 1501.16

    パウロは、彼が忠実に福音の原則を教えた人々が、このように公然と背教するのに心を痛め、不安を感じた。彼は、直ちに、惑わされた信者たちに手紙を送って、彼らが受けいれた偽りの教えを暴露し、非常に厳しく、信仰から離れた人々を譴責した。彼は、「わたしたちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安とが、あなたがたにあるように」と言ってガラテヤ人にあいさつしてから、次のような厳しい譴責の言葉を、彼らに語った。AA 1501.17

    「あなたがたがこんなにも早く、あなたがたをキリストの恵みの内へお招きになったかたから離れて、違った福音に落ちていくことが、わたしには不思議でならない。それは福音というべきものではなく、ただ、ある種の人々があなたがたをかき乱し、キリストの福音を曲げようとしているだけのことである。しかし、たといわたしたちであろうと、天からの御使であろうと、わたしたちが宣べ伝えた福音に反することをあなたがたに宣べ伝えるなら、その人はのろわるべきである」。 パウロの教えは、聖書と一致していた。そして聖霊が、彼の働きをあかししていた。それだからパウロは、彼が教えた真理に矛盾するどんな事にも耳を傾けないように、兄弟たちに警告した。AA 1501.18

    パウロは、ガラテヤの信者たちに、彼らのクリスチャン生活の最初の経験を慎重に考慮するように命じ、大声で叫んで言った。「ああ、物わかりのわるいガラテヤ人よ。十字架につけられたイエス・キリストが、あなたがたの目の前に描き出されたのに、いったい、だれがあなたがたを惑わしたのか。わたしは、ただこの1つの事を、あなたがたに聞いてみたい。あなたがたが御霊を受けたのは、律法を行ったからか、それとも、聞いて信じたからか。あなたがたは、そんなに物わかりがわるいのか。御霊で始めたのに、今になって肉で仕上げるというのか。あれほどの大きな経験をしたことは、むだであったのか。まさか、むだではあるまい。すると、あなたがたに御霊を賜い、力あるわざをあなたがたの間でなされたのは、律法を行ったからか、それとも、聞いて信じたからか」。AA 1502.1

    こうして、パウロは、ガラテヤの信者たち自身の良心に訴えて、彼らの行動を阻止しようとした。パウロは、神の救いの力に頼って、背信した教師たちの教えを承認することを拒んだ。そして彼は、信者たちは大いに欺かれたけれども、彼らが以前の福音の信仰に立ち帰るならば、なおサタンの計略を挫折させることができることを、彼らに悟らせようと努力した。彼は、真理と義の側に堅く立った。パウロが自分の伝えた使命に対して抱いた絶大な信仰と確信は、信仰を失った多くの者が救い主に立ち帰る助けとなった。AA 1502.2

    パウロがコリントの教会に書いた方法は、ガラテヤ人に書いた方法となんと異なっていることであろう。彼は、前者を注意深く、優しく譴責したが、後者には、容赦なく譴責の言葉を語った。コリント人は、誘惑に負かされたのであった。彼らは、真理のように見せかけて誤りを教えた教師たちの巧みな詭弁に欺かれ、混乱と当惑におちいっていた。真理と誤りを見分けることを彼らに教えるには、慎重さと忍耐が必要であった。もしパウロが、苛酷さや無分別な焦燥を現せば、彼が助けようと望んでいる多くの人々に対する感化力を失ったであろう。AA 1502.3

    ガラテヤの諸教会においては、誤りが、公然と、何の仮面もかぶらずに、福音の使命に取って代わりつつあった。信仰の真の土台であるキリストが、事実上捨て去られて、ユダヤ教の古い儀式がこれに代わった。パウロは、ガラテヤの信者たちを襲った危険な影響から彼らを救い出そうとすれば、最も断固たる措置を取り、最も厳しい警告を発しなければならないことを知った。AA 1502.4

    キリストのすべての伝道者が学ばなければならない重要な教訓は、益を与えようとしている相手の人々の状態に、自分の働きを適合させることである。優しさ、忍耐、決断、堅固さなどはみな必要であるが、これらを正しく識別して用いなければならない。いろいろと異なった環境と状況下における、さまざまの異なった性質の人々を賢明に扱うことは、神の霊によって照らされ清められた知恵と判断力を必要とする働きである。AA 1502.5

    パウロは、ガラテヤの信者たちへの手紙の中で、彼自身の悔い改めと初期のクリスチャン経験の主要な事件を簡単に述べている。彼は、このような方法によって、彼が福音の大真理を認めて理解したのは、神の力の特別な現れによるものであることを示そうとした。パウロがこのように厳粛で積極的な方法でガラテヤびとに警告と勧告を発したのは、神ご自身から受けた指示によるものであった。彼は、ためらいや疑いではなくて、堅い確信と疑う余地のない知識をもって書いた。彼は、人に教えられることと、キリストから直接教えを受けることとの相違を、はっきりと説明した。AA 1502.6

    パウロは、ガラテヤ人を誤った道に導いた偽の指導者から離れて、神の是認の確かな証拠を持った信仰に立ち帰るように、彼らに勧告した。彼らを福音の信仰から引き離そうとした人々は、心が不潔で生活が腐敗した偽善者たちであった。彼らの宗教は、儀式の繰り返しであって、彼らは、それを行うことによって、神の恵みを得ようとしていた。彼らは、「だれでも新しく生れなければ、神の国を見ることはできな い」ということばに服従を要求する福音を望まなかった(ヨハネ3:3)。彼らは、そのような教理に基づく宗教は、あまりに大きな犠牲を要求すると感じ、自分たちの誤った道に執着して、自分を欺き、他の人々を欺いた。AA 1502.7

    宗教の外的形式を心と生活の清めに代用することは、これらのユダヤの教師たちの時代と同様に今でもなお、改心していない人々に歓迎されている。今日も当時と同様に、偽の霊的指導者がいて、多くの人々が、彼らの教えに熱心に耳を傾けている。サタンは巧妙に働いて、キリストを信じ神の律法を守ることによって与えられる救いの希望から、人々の心をそらそうとしている。大敵サタンは、各時代において、彼が欺こうとする相手の偏見や好みに、彼の誘惑を適合させる。彼は、使徒時代においては、ユダヤ人を、礼典律を尊重してキリストを拒否するように導いた。彼は現代においては、多くの自称クリスチャンたちに、キリストを尊ぶという口実の下に、道徳律を軽視させ、その戒めを犯しても罰はないと教えさせるのである。神のしもべは、信仰を曲解するこれらの人々に、しっかりした断固たる態度で立ち向かい、真理のことばによって、恐れることなく彼らの誤りを暴露しなければならない。AA 1503.1

    パウロは、ガラテヤの兄弟たちの信任を回復しようとして、キリストの使徒としての自分の身分について、巧みに弁明した。彼は、自分が使徒として立てられたのは、「人々からでもなく、人によってでもなく、イエス・キリストと彼を死人の中からよみがえらせた父なる神とによって」であると言った。彼は、人からではなくて、天の最高の権威者から任命を受けたのである。そして彼の地位は、エルサレム会議によって認められ、パウロは、異邦人間でのあらゆる働きにおいて、その決定に従ったのである。AA 1503.2

    パウロがこのようにして、彼の使徒としての地位を疑った人々に、自分が「あの大使徒たちにいささかも劣ってはいない」という証拠を示したのは、自己を高めるためではなくて、神の恵みを賛美するためであった(Ⅱコリント11:5)。彼の召命と彼の働きを軽視しようとした人々は、キリストに反抗していた。キリストの恵みと力が、パウロによってあらわれたのである。パウロは、敵の反対が起こったために、やむを得ず、自分の地位と権威を維持するために、断固とした態度をとらなければならなかった。AA 1503.3

    パウロは、かつてその生活に神の力を経験した人々に、福音の真理に対する最初の愛に立ち帰るようにと訴えた。彼は、彼らが、キリストにあって自由な男女になれること、またキリストのあがないの恵みによって、完全に献身する者はみな彼の義の衣を着せられることを、反駁することのできない議論によって、彼らに示した。救いを得たいと願う者は、神の事について、真実で個人的な経験が必要であるというのが、彼の立場であった。AA 1503.4

    パウロの熱心な嘆願の言葉は、効を奏した。聖霊が、大いなる力をもって働き、誤った道に足をふみ入れた多くの者が、以前の福音の信仰に立ち帰った。その後、彼らは、キリストがお与えになった自由に堅く立った。彼らの生活には、「愛、喜び、平和、寛容、慈愛、善意、忠実、柔和、自制」などの聖霊の実があらわれた。神のみ名は崇められ、その地方全体の信者の数が大いに増加した。AA 1503.5

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