第16章 アハブ家の没落
本章は列王紀上21章、列王紀下1章に基づくPK 468.11
イゼベルが最初にアハブに及ぼした悪影響は、彼の生涯の後年にも続き、聖書歴史において、その類を見ない恥ずべき行為と暴力行為となってあらわれた。「アハブのように主の目の前に悪を行うことに身をゆだねた者はなかった。その妻イゼベルが彼をそそのかしたのである」(列王紀上21:25)。PK 468.12
アハブは生まれながら強欲な性質であったので、イゼベルの悪行に勢いと支持を得て、彼の邪悪な心の欲するままにふるまい、ついに、彼は利己心の支配下に完全に陥ってしまった。彼は自分の欲求が拒まれるのに耐えられなかった。彼は、欲しいと思ったものは当然自分のものにする権利があると考えた。PK 468.13
彼のこうした顕著な性質は、アハブの王位を継いだ王たちの時代に、王国の運命に悲劇的影響を及ぼすことになるのであったが、それは、エリヤが、まだ、イスラエルの預言者であったときに起こったでき事にあらわされている。王の宮殿のかたわらに、エズレルびとナボテに属するぶどう畑があった。アハブはこのぶどう畑を手にいれたいと思った。そして、それを買うか、それとも、それを他の土地と取りかえようと申し出た。「あなたのぶどう畑はわたしの家の近くにあるので、わたしに譲って青物畑にさせてください。その代り、わたしはそれよりも良いぶどう畑をあなたにあげましょう。もしお望みならば、その価を金でさしあげましょう」とアハブはナボテに言った(同21:2)。PK 468.14
ナボテは、彼のぶどう畑が先祖からのものであったので、それを高く評価し、手放すことを拒否した。「わたしは先祖の嗣業をあなたに譲ることを断じていたしません」と彼はアハブに言った(同21:3)。レビ記の律法によれば、どんな土地も永久に売却したりまたは取り替えたりしてはならなかった。イスラエルの民のすべての者は、「おのおのその父祖の部族の嗣業をかたく保つべきだからである」(民数記36:7)。PK 468.15
ナボテの拒否は利己的な王の心を害した。「アハブはエズレルびとナボテが言った言葉を聞いて、悲しみ、かつ怒って家にはいった。……アハブは床に伏し顔をそむけて食事をしなかった」(列王紀上21:4)。PK 468.16
イゼベルは、やがて、事件の詳細を聞いて、王の要求を拒む者があることを怒り、アハブにもう悲しむ必要はないと言った。「あなたが今イスラエルを治めているのですか。起きて食事をし、元気を出してください。わたしがエズレルびとナボテのぶどう畑をあなたにあげます」と彼女は言った(同21:7)。PK 468.17
アハブは彼の妻がどんな方法でほしい物を手に人れようが気にしなかった。イゼベルは直ちに彼女の邪悪な策略を実行に移した。イゼベルは王の名で手紙を書き、彼の印を押して、それをナボテが住んでいる町の長老たちと身分の尊い人々に送って言った 「断食を布告して、ナボテを民のうちの高い所にすわらせ、またふたりのよこしまな者を彼の前にすわらせ、そして彼を訴えて、『あなたは神と王とをのろった』と言わせなさい。こうして彼を引き出し、石で撃ち殺しなさい」(同21:9、10)。PK 468.18
人々はこの命令に従った。「その町に住んでいる長老たちおよび身分の尊い人々は、イゼベルが言いつかわしたようにした。彼女が彼らに送った手紙に書きしるされていたように」した(列王紀上21:11)。すると、イゼベルは王のところに行って、彼に一立ってぶどう畑を取るように言った。アハブはその結果がどうなるかも考えずに、盲目的に彼女の勧告に従い、ほしくてたまらない地所を取るために出かけて行った。PK 469.1
王は欺瞞と流血によって得たものを、なんの譴責も受けることなしに、楽しむことは許されなかった。「主の言葉がテシベびとエリヤに臨だ、『立って、下って行き、サマリヤにいるイスラエルの王アハブに会いなさい。彼はナボテのぶどう畑を取ろうとしてそこへ下っている。あなたは彼に言わなければならない、「主はこう仰せられる、あなたは殺したのか、また取ったのか」と』」(同21:17-19)。そして、主はアハブに恐るべき刑罰の宣告をすることをエリヤに命じられたのである。PK 469.2
預言者は神の命令を実行するために急いだ。罪深い王はぶどう畑で主の厳しい使者に面と向かって出会い、驚き恐れて、「わが敵よ、ついに、わたしを見つけたのか」と言った(同21:20上句)。PK 469.3
主の使者はためらうことなく、「見つけました。あなたが主の目の前に悪を行うことに身をゆだねたゆえ、わたしはあなたに災を下し、あなたを全く滅ぼ」す」と言った(同21:20下句~21)。あわみの情は何ひとつ示されなかった。アハブの家は、「ネバテの子ヤラベアムの家のようにし、アヒヤの子バアシヤの家のように」全く滅ぼされるのであった。主はそのしもべによって、「これはあなたがわたしを怒らせた怒りのゆえ、またイスラエルに罪を犯させたゆえ」であると言われた(同21:22)。PK 469.4
そして主はイゼベルについては、「犬がエズレルの地域でイゼベルを食うであろう」。「アハブに属する者は、町で死ぬ者を犬が食い、野で死ぬ者を空の鳥が食う」であろうと言われた(同21:23)。PK 469.5
王はこの恐るべき言葉を聞いた時に、「衣を裂き、荒布を身にまとい、食を断ち、荒布に伏し、打ちしおれて歩いた。PK 469.6
この時、主の言葉がテシベ人エリヤに臨んだ、『アハブがわたしの前にへりくだっているのを見たか。彼がわたしの前にへりくだっているゆえ、わたしは彼の世には災を下さない。その子の世に災をその家に下すであろう』」(同21:27~29)。PK 469.7
その後3年足らずで、アハブ王はスリヤ人の手にかかって死んだ。彼に続いて王になったアハジヤは、「主の目の前に悪を行い、その父の道と、その母の道、および…ヤラベアムの道に歩み、バアルに仕えて、それを拝み、イスラエルの神、主を怒らせた。すべて彼の父がしたとおりであった」(同22:52、53)。しかし、刑罰は神にそむいたその罪にすぐ続いて起こった。モアブとの悲惨な戦いと彼自身の生命を脅かした事故は、神の怒りが彼に注がれているしるしであった。PK 469.8
アハジヤは、「高殿のらんかんから落ちて」ひどいけがをした。そして、その結果が心配だったので、回復するかどうかを尋ねるために、エクロンのバアル・ゼブブに彼のしもべたちの幾人かをつかわした。PK 469.9
エクロンの神はその祭司たちによって、将来のでき事を告げるものと思われていた。多くの人々がそれを聞くために出かけた。しかし、そこで語られた預言や与えられた知識は、暗黒の君から出たものであった。PK 469.10
アハジヤのしもべたちは神の人に会った。彼は王のところに帰って次のように言うように命じた、「『あなたがたがエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようとして行くのは、イスラエルに神がないためか』。それゆえ主はこう仰せられる、『あなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう』」(列王紀下1:4)。預言者は、こう言って、去っていった。PK 469.11
驚いたしもべたちは、急いで王のところへ帰り、神 の人の言葉を彼に伝えた。王は、「どんな人であったか」とたずねた。彼らは、「その人は毛ごろもを着て、腰に皮の帯を締めていました」と答えた。アハジヤは、「その人はテシベびとエリヤだ」と叫んだ(同1:7、8)。彼はもし彼のしもべたちが会った見知らぬ人がエリヤであったならば、語られた宣告の言葉は必ずそのとおりになることを知っていた。彼はできることならば差し迫った刑罰を避けようとして、預言者を呼びに使者をつかわした。PK 469.12
アハジヤは2度も預言者をおどすために兵隊たちをつかわしたが、2度とも彼らの上に神の刑罰が下った。第3番目の兵隊たちは神の前に心を低くした。その隊長は、主の使者に近づいて、「エリヤの前にひざまずき、彼に願って言った、『神の人よ、どうぞ、わたしの命と、あなたのしもべであるこの50人の命をあなたの目に尊いものとみなしてください』」(同1:13)。PK 470.1
「その時、主の使はエリヤに言った、『彼と共に下りなさい。彼を恐れてはならない』。そこでエリヤは立って、彼と共に下り、王のもとへ行って、王に言った、『主はこう仰せられます、「あなたはエクロンの神バアル・ゼブブに尋ねようと使者をつかわしたが、それはイスラエルに、その言葉を求むべき神がないためであるか。それゆえあなたは、登った寝台から降りることなく、必ず死ぬであろう」』」(同1:15、16)。PK 470.2
アハジヤは彼の父の治世の間、至高者であられる神の驚くべきみわざを目撃したのであった。彼は、守るべき神の律法の要求を無視する人々を神がどう扱われるかという恐るべき証拠が、背信したイスラエルに示されたのを見た。アハジヤは、こうした恐るべき現実があたかも愚かな話であるかのように行動した。彼は主の前に彼の心を低くするかわりに、バアルに従い、ついに、この最も大胆な不信行為に走ってしまったのである。反逆的で悔い改めようとしなかったアハジヤは、「エリヤが言った主の言葉のとおりに死んだ」(列王紀下1:17上句)。PK 470.3
アハジヤ王の罪とその刑罰の物語は、だれでも律法を無視するならば、必ず罰を受けるという警告である。今日、人々は異教の神々をあがめてはいないであろうが、幾千という人々が、イスラエルの王が行ったのと全く同じようにサタンの神殿で礼拝している、今日は、科学と教育が進歩したにもかかわらずアハジヤがエクロンの神を求めた時代よりももっと洗練され、魅力的な形態をとって、偶像礼拝が盛んに世界で行われている。日ごとに、預言の確かな言葉に対する信仰が薄れ行く悲しむべき徴候が増し加わり、それにかわって、迷信とサタン的魔力が多くの人々の心を捕らえている。PK 470.4
今日、異教礼拝の神秘的儀式にかわって、秘密結社、降神術の集会、心霊術の霊媒などの薄暗さと不可解さとがある。神のみ言葉、または、聖霊による光を拒否する幾千という人々が、これらの霊媒の言うことを熱心に受けいれている。心霊術の信者たちは、古代の魔術を軽蔑して語るであろうが、大欺瞞者は、彼らが別の形の彼の策略に陥るのを、勝ち誇って喜ぶのである。PK 470.5
心霊術の霊媒の勧告を求めることを嫌悪する多くの人々が、さらに好ましい形態の心霊術に心をひかれているのである。他の人々は、クリスチャンサイエンスの教えや、神知学の神秘主義や、その他東洋の宗教にまどわされている。PK 470.6
ほとんどすべての種類の心霊術の主唱者たちは、癒しの力を持っていると主張する。彼らは、この能力を電気、磁気の力、いわゆる「共感治療」または、人間の心の中にある潜在力によるものであると言っている。PK 470.7
このキリスト教時代にあってさえ、生きた神の力と資格をもった医師の技術に信頼せずに、こうした治療者のところへ行く人が多くある。子供の病床で見守っている母親は、「もうわたしにはこれ以上何もできない。わたしの子供を治して下さる力を持った医師はないものだろうか」と叫ぶ。彼女は、千里眼的磁気治療者が驚くべきいやしを行っていると聞いて彼女の愛する子供を彼にゆだねるのであるが、これは、正しく彼女のかたわらに立っているも同然のサタンに委ねることである。多くの場合、子供の将来は サタンの力に支配されて、それからぬけ出ることは、ほとんど不可能になるのである。PK 470.8
神がアハジヤの不信仰に対してお怒りになるには理由があった。神はイスラエルの人々の心を捕らえ、彼らに神に対する確信を抱かせるために、なさらなかった事が何かあっただろうか。神は、長年にわたって神の民に、ほかのだれにも示されなかった寛容と愛をあらわされた。神は、最初から、ご自分が「世の人を喜」ばれることをお示しになった(箴言8:31)。神は心から神を求めるすべての者にとって、いと近き助けであられた。それにもかかわらずイスラエルの王は神をすてて、神の民の最悪の敵の助けを求め、天の神よりは異教徒の偶像の方を信頼していることを、彼らに宣言したのである。それと同様に、人々が力と知恵の源泉であられる神を離れて、暗黒の君の援助や勧告を求める時に、神のみ栄えを汚すのである。もし神がアハジヤの行為をお怒りになったとするならば、もっと大きな光を持った者が、同様の道を歩くことを選ぶならば、神はそのような人々を、どのよりにごらんになることであろう。PK 471.1
サタンの魔術に身を委ねたものは、大きな利益にあずかったと誇ることであろう。しかし、それが、賢明で安全な道であることの証明であろうか。生命が延ばされたならどうなるだろうか。物質的利益が与えられたらどうなるだろうか。それは、最後に、神のみこころを潮したことの埋め合わせになるだろうか。一見、利益と見えたことは、みな、最後に取りかえしのつかない損失となるのである。神がサタンの力から神の民を守るために設けられた防壁を1つでも破壊するならば、必ず罰を受けるのである。PK 471.2
アハジヤには息子がなかったので、彼の兄弟のヨラムが彼の後を継ぎ、10部族を12年間治めた。その鯛を通じて、彼の母のイゼベルがなお生きていて、国家の政治に悪い影響を及ぼした。国民の多くは、まだ、偶像的習慣を行っていた。ヨラムは、「主の目の前に悪をおこなったが、その父母のようではなかった。彼がその父の造ったバアルの石柱を除いたからである。しかし彼はイスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤラベアムの罪につき従って、それを離れなかった」(列王紀下3:2、3)。PK 471.3
ヨラムがイスラエルを治めていた時代に、ヨシャパテは死んだ。そして、同じくヨラムというヨシャパテの息子が、ユダの王位についた。しかし、アハブとイゼベルの間に生まれた娘と結婚していたので、ユダのヨラムはイスラエルの王と深い関係にあった。そしてその治世において、「彼はアハブの家がしたように」バアルに従った。「彼はまたユダの山地に高き所を造って、エルサレムの民に姦淫を行わせ、ユダを惑わした」(歴代志下21:6、11)。PK 471.4
ユダの王は彼の恐ろしい背信を、何の譴責も受けずに続けることは許されなかった。預言者エリヤは、まだ、天に移されていなかった。彼は、北王国を滅亡させたのと同じ道をユダ王国がたどっているのを見て、黙っていることができなかった。預言者は、ユダのヨラムに一通の手紙を送った。その中で、悪王ヨラムは次のような恐ろしい言葉を読んだのである。「あなたの先祖ダビデの神、主はこう仰せられる、『あなたは父ヨシャパテの道に歩まず、またユダの王アサの道に歩まないで、イスラエルの王たちの道に歩み、ユダとエルサレムの民に、かのアハブの家がイスラエルに姦淫を行わせたように、姦淫を行わせ、またあなたの父の家の者で、あなたにまさっているあなたの兄弟たちを殺したゆえ、主は大いなる災をもってあなたの民と子供と妻たちと、すべての所有を撃たれる。あなたはまた……大病に』」なる(同21:12~15)。PK 471.5
この預言の成就として、「主はヨラムに対してエチオピヤびとの近くに住んでいるペリシテびととアラビヤびとの霊を振り起されたので、彼らはユダに攻め上って、これを侵し、王の家にある貨財をことごとく奪い去り、またヨラムの子供と妻たちをも奪い去ったので、末の子エホアハズ〔注・別名アハジヤまたはアザリヤ〕のほかには、ひとりも残った者がなかった。PK 471.6
このもろもろの事の後、主は彼を撃って内臓にいえがたい病気を起させられた。時がたって、2年の終りになり、……重い病苦によって死んだ」。「その子 アハジヤ〔注・別名エホアハズ〕が代って王となった」(同21:16~19、列王紀下8:24)。PK 471.7
アハブの息子、イスラエルの王ヨラムのおいアハジヤがユダの王になったとき、ヨラムはまだイスラエルを治めていた。アハジヤはわずか1年しか治めなかったが、その母アタリヤが「彼の相談相手となって悪を行わせ」た。彼は「アハブの家がしたように主の目の前に悪を行った」(歴代志下22:3、4、列王紀下8:27)。彼の母イゼベルはなお生きていた。そして、彼は彼のおじイスラエルの王ヨラムと大胆に同盟を結んだ。PK 472.1
ユダのアハジヤは間もなく悲劇的な死にかたをした。「その父が死んだ後」、アハブの家の残った者が彼の相談役になった(歴代志下22:4)。アハジヤが、エズレルにいる彼のおじを訪問している時に、預言者エリシャは神の霊感を受けて、ラモテ・ギレアデより預言者のともがらの1人をつかわして、油を注いでエヒウをイスラエルの王とするように命じられた。その時、ユダとイスラエルの連合軍はラモテ・ギレアデでスリヤ人と戦っていた。ヨラムは戦いで傷つき、エズレルに帰り、エヒウに王の軍隊の指揮を委ねていた。PK 472.2
エリシャの使者はエヒウに油を注いで「わたしはあなたに油を注いで主の民イスラエルの王とする」と言った。そして彼は、厳粛に、天からの特別の任命を彼に与えた。主は彼のしもべによって言われた。「あなたは主君アハブの家を撃ち滅ぼさなければならない。それによってわたしは、わたしのしもべである預言者たちの血と、主のすべてのしもべたちの血をイゼベルに報いる。アハブの全家は滅びるであろう」(列王紀下9:6~8)。PK 472.3
エヒウは軍隊によって王としての宣言を受けた後で、エズレルに急いで行き、そこで、故意に罪を犯し続け、また、他の者にも罪を犯させていた人々の処刑を始めた。イスラエルのヨラム、ユダのアハジヤ、そして、皇太后のイゼベルは、「アハブの家に属する者でエズレルに残っている者」、「またそのすべてのおもだった者、その親しい者およびその祭司たち」とともに殺された。サマリヤの近くのバアル礼拝の中心地に住んでいた「バアルのすべての預言者、すべての礼拝者、すべての祭司」は、つるぎをもって撃ち殺された。偶像は取り出されて、焼かれた。そして、バァルの宮は廃虚と化した。「このようにエヒウはイスラエルのうちからバアルを一掃した」(列王紀下10:11、19、28)。PK 472.4
こうして、いっせいに処刑が行われたことが、イゼベルの娘アタリヤに聞こえた。彼女はまだユダ王国に支配的地位を占めていた。彼女が自分の息子のユダの王が死んだのを見て、「立ってユダの家の王子をことごとく滅ぼした」。この虐殺によって王位継承者であったダビデの子孫は、ひとりを除いて皆殺されてしまった。大祭司エホヤダの妻は、ヨアシという赤子を神殿の中に隠したのである。「アタリヤが国を治めた」間、この子は6年の間隠されていた(歴代志下22:10、12)。PK 472.5
その後、「レビびとおよびユダの人々は」(同23:8)大祭司エホヤダとともに幼児ヨアシを王にして油を注ぐことに同意して、彼を彼らの王であると宣言した。「人々は手を打って『王万歳』と言った」(列王紀下11:12)。PK 472.6
「アタリヤは民の走りながら王をほめる声を聞いたので、主の宮に入り、民の所へ行っ」た(歴代志下23:12)。「見ると、王は慣例にしたがって柱のかたわらに立ち、王のかたわらには大将たちとラッパ手たちが立ち、また国の民は皆喜んでラッパを吹いていた」。PK 472.7
「アタリヤはその衣を裂いて、『反逆です、反逆です』と叫んだ」(列王紀下11:14)。しかし、エホヤダは、アタリヤと彼女に従うすべての者を捕らえて、宮から刑場に引き出して、そこで彼らを殺すことを命じた。PK 472.8
こうして、アハブの家の最後に残った者が滅びうせた。彼がイゼベルと結んで及ぼした恐るべき悪影書は、彼の最後の子孫が滅ぼされるまで続いた。真の神の礼拝が、正式に廃されたことのなかったユダ王国においてさえ、アタリヤは多くの者を欺いたのである。悔い改めることをしなかった女王の処刑後、「国の民は皆バアルの宮に行って、これをこわし、その祭 壇とその像を打ち砕き、バアルの祭司マッタンをその祭壇の前で殺した」(同11:18)。PK 472.9
それに続いた改革が起こった。ヨアシを王であると宣言した人々は、厳粛に、彼らが「主の民となるとの契約を結んだ」。ユダ王国からは、イゼベルの娘の悪影響が除去され、バアルの祭司たちは殺され、その宮は焼かれたのであるから、「国の民は皆喜んだ。町は……穏やかであった」(歴代志下23:16、21)。PK 473.1