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各時代の大争闘 - Contents
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    法王側の策動

    ローマ派の者たちは敗北した。彼らの運動は最も不利なぐ匠場に陥ったように見えた。彼らは、聖書に訴えることをせず、ローマの常套手段である脅迫によって、彼らの権力を維持しようとした。議会の代弁者は、「あなたが取り消さないならば、皇帝と帝国内の諸国は、頑迷な異端者に何をすべきかを協議する」と言った。GC 1668.1

    ルターの友人たちは、彼の堂々とした弁護を非常に喜んで聞いていたが、この言葉を聞いて戦慄した。しかしルター自身は冷静に、「神がわたくしの援助者となってくださるように。わたくしには何も取り消すことができないからです」と言った。24GC 1668.2

    彼は、諸侯たちが協議する間、議会から出るように命じられた。一大危機がやってきたことが感じられた。ルターが従うことを頑強に拒むことは、幾時代にもわたる教会の歴史に影響を及ぼすものであった。彼にもう1度取り消す機会を与えることが決定された。彼は、いよいよ最終的に議会に連れ出された。彼は、もう1度、彼の教義を放棄するかどうかを聞かれた。「わたくしは、すでに申し上げたこと以外に、お答えすることはございません」と彼は言った。どんな約束や脅迫によっても、彼をローマの命令に屈服させることができないことは明らかであった。GC 1668.3

    法王側の指導者たちは、王たちや貴族たちを戦標させてきた彼らの権力が、このようにして卑しい修道王によって軽べつされたことを無念がり、彼に拷問の責め苦を加えて殺すことによって、彼らの怒りを彼に思い知らせたいと望んだ。しかしルターは、自分の危険を悟って、すべての者にキリスト者の威厳と冷静さをもって答えた。彼の言葉には、高慢や激しい感情や誤り偽りなどは1つもなかった。彼は、自分自身も、自分の周りの偉大な人物たちのことも忘れ、ただ自分が、法王や高位聖職者や王や皇帝などよりも、無限に優れておられるところの神の面前にある、ということしか考えなかった。キリストが、ルターの証言を通して力強く堂々と語られたのであった。そのために、敵も味方も、一時は驚嘆し敬服してしまった。その議会には神の霊が臨在して、帝国の首脳者たちの心に感銘を与えられた。諸侯たちの幾人かは、ルターの運動の正当性を大胆にも認めた。多くの者が真理を悟った。しかし、受けた印象が長続きしない者もあった。そのほかに、この時は受けた感銘の表示はしなかったものの、後に自分で聖書を研究して、恐れを知らぬ宗教改革の支持者になったものもあった。GC 1668.4

    選挙侯フリードリヒは、ルターが議会に現れるのを、今か今かと待っていた。そして、彼の演説を聞いて深く感動した。彼は、喜びと誇りをもってルターの勇気と堅固さと沈着な態度を見、ますます断固として彼を擁護する決心をした。彼は、論争における両者を比較し、法王や王たちや高位聖職者たちの知恵が、真理の力によって打ちこわされたのを見た。法王制は、各国各時代に影響を及ぼす敗北をこうむった。GC 1668.5

    法王使節は、ルターの演説が引き起こした影響に気づいた時、これまでになかったほどローマの権力の安泰を心配し、全力をあげて改革者ルターを倒そうと決意した。彼は、その優れた特質であった雄弁と外交的手腕とをふるって、名もない一修道士の主張のために、強力なローマ法王庁の友交と支持を犠牲にすることの愚かさと危険とを、若い皇帝に説いた。GC 1668.6

    彼の言葉は影響を及ぼさずにはいなかった。ルターの答弁が行われた翌日、カールは、先祖たちの政策に従ってカトリック教を擁護し保護するという決意を伝える布告を、議会に提出させた。ルターは自分が誤っていることを取り消すのを拒んだのであるから、彼と、彼の唱えた異端に対しては、断固とした処置が取られるのであった。「自分自身の愚かな考えに道を誤った一修道士が、キリスト教の信仰に反対して立ち上がった。このような不敬慶を阻止するために、わたしは、わたしの王国、わたしの宝、わたしの友、わたしの体、わたしの血、わたしの魂、そして、わた しの生命を犠牲にする。わたしは、アウグスチン派修道会士ルターを追放し、彼が国民の間で少しでも秩序を乱すことを禁じる。そして、わたしは、ルターと彼の支持者たちを、反抗的な異端者として訴え、破門、聖務禁止、そしてあらゆる手段をもって撲滅するであろう。わたしは、議員たちが、忠実なキリスト者として行動することを求める。」25しかしルターの通行券は尊重すべきで、彼に対する処分が行われる前に彼は安全に帰宅を許されるべきであると皇帝は宣した。GC 1668.7

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